たまりば

地域と私・始めの一歩塾 地域と私・始めの一歩塾その他 その他

酔いがさめたら、うちに帰ろう

東京国際映画祭で「酔いがさめたら、うちに帰ろう」を観ました。

酔いがさめたら、うちに帰ろう

【STORY】
「来週は素面で家族と会うのです」と言いながらウォッカを飲み、血を吐いて気絶した戦場カメラマンの塚原安行。母・弘子は慌てつつも、慣れた様子で救急車を呼び、救急隊員に掛かり付けの病院を伝えている。その場に駆け込んできた、売れっ子漫画家の園田由紀が、「大丈夫、まだ死なないよ」と安行の頬をさすった。ふたりは結婚し、子供にも恵まれたが、安行のアルコール依存症が原因で離婚し、今は別々に暮らしている。安行は病院に運ばれ、そのまま3ヶ月の入院になった。それは10回目の吐血だった。

知り合いの医師を訪れ、アルコール依存症について尋ねる由紀。医者は身を乗り出し「ほかの病気と決定的に違う一番の特徴……それは、ほかの病気と違い、世の中の誰もほんとうには同情してくれないことです。場合によっては医者さえも」と言った。その言葉は由紀の胸に深く突き刺ささる。

退院後、抗酒剤を服用し禁酒している安行は、穏やかな日々を過ごしていた。そんな時に、一人でふらっと入った寿司屋で出された奈良漬け。「酒じゃないから大丈夫か」とパクリ……。数分後、安行はコンビニの酒棚に直行していた。気がつくと、酔っ払って転倒し頭から血が流れていた。「ああ……奈良漬け……」意識がかすんでいく。

後日、タクシーに乗りある場所に到着した安行と弘子。驚いている安行をその場に残し、「ここは精神病院。あなたは入院するんです」と言って弘子は足早に中へと入ってゆく。嫌々ながら入院したアルコール病棟だったが、ここでの風変わりだけど憎めない入院患者たちとの生活や、個性的な医者との会話は不思議な安堵感を与えてくれた。
体力も心も回復に向かっているかに見えた安行だったが、その体にはもうひとつの大きな病気をかかえていた……。

【感想】
この映画は、「毎日かあさん」でお馴染みの西原理恵子のご主人であり、
実際アルコール依存症だった鴨志田穣さんの本が原作となっています。

アルコール依存症をはじめ、薬物などの依存症は病気なのですが、
【STORY】にもあるように、他の病気とは決定的に違うことがあります。
同情されない病気だということです。
病気だと思ってもらえない病気でもあります。
弱さから来ているものだと思われ、病気と戦わなければいけない家族も仲間も、病気ではなく本人と戦ってしまうのです。
何故、そういうことが起きるのかというと、家族を巻き込む病気ともいえるからでしょう。
患者からすれば、体はもちろんですが、大切な人とのつながりや、生活の基盤も失い、心と生活が侵される病気だとも言われています。

11月6日の産経新聞に、
英国の科学者らが、アルコールはどんな薬物よりも危険性が高いという研究結果を発表という記事が載っていました。
20種類の薬物を人体への有害性や依存度、他人への悪影響などの項目で評価、比較して導き出された結論です。
飲酒運転事故、酔ったうえでの子どもの虐待やDV、傷害・殺人……。酒にまつわる事件や事故は日常にあふれています。

人体への健康被害は違法薬物のほうが高い数値でしたが、犯罪を含む他人への被害や家族との衝突、医療制度などに及ぼす影響などの項目はアルコールのポイントが高く、100を最高とした危険度はアルコールが72と分析。
ヘロインは55、コカインは27、たばこ26、大麻は20だそうです。

そんなアルコール依存症になった主人公ですが、深刻なんだけど、どこかユーモラス。
回復者だからこその、俺ってばかだったなあという回想の視点で描かれています。

毎日かあさんのマンガをみても思うのですが、この家族は辛さも苦しさも笑いとばそうとする強さを持っているように思います。
どうせがっつり向き合うならといった覚悟みたいなものでしょうか。

西原さんは、夫がどうであれ、自分の気持ちを開放できる、生活の基盤となる漫画があることで、自分も家庭も守れたのかもしれない。そんな特別な状況はあったのかもしれません。
でも、私は、どんな夫でも、子供にとっては父さんであるという、家族でありながら境界線をきちんとひける姿勢を彼女がもっていたからではないかと思うのです。
家族といっても、夫婦、母子、父子といった1つ1つの関係、それぞれの個人を尊重し、踏み込みすぎない、でも丁寧に見守っている。

アルコール依存になったご主人に対しても、
好きだった人をきらいになるのはむつかしい。
という言葉がとても印象的でした。

主人公は、ずっとしょうがない自分を知っています。
でもずっと覚悟ができてなかったのだと思います。
父親でいさせてもらっていたことが、覚悟につながっていったんじゃないかな。
病気だと認めて治す覚悟をしたことで、今度こそ、本当にまた家族と繋がることができた。
繋がっていてくれて良かったね。帰れる場所があって良かったねと心から思いました。

この映画は、家族の再生の物語です。
家族って何だろう?家族と繋がっているって何だろう?と考えさせてくれる映画でした。

アルコール依存にならずとも、失業や病気etc
日常の延長にいつでも起こりえることだと思うのです。
家族の危機が起きた時、どう家族とつながっていられますか?
しっかり手を握ったり、思わず、時には敢えて離したり、そしてまたソット繋げたり。繰り返しながら。

映画は12月4日(土)シネスイッチ銀座他で公開です。








  • 同じカテゴリー(タッチとアタッチメント)の記事画像
    鏡餅と餅工作
    ぼくのものがたり
    9回目の結婚記念日
    アイコンタクト
    同じカテゴリー(タッチとアタッチメント)の記事
     息子の交通事故 (2011-05-19 23:36)
     心温まるもの。忘れてはいけないこと (2011-03-14 10:25)
     鏡餅と餅工作 (2010-12-31 10:38)
     ぼくのものがたり (2010-12-23 10:38)
     家族は力なり (2010-12-21 21:07)
     9回目の結婚記念日 (2010-11-27 10:46)

    上の画像に書かれている文字を入力して下さい
     
    <ご注意>
    書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

    削除
    酔いがさめたら、うちに帰ろう
      コメント(0)