障害者雇用7割!日本で一番温かい。チョーク工場見学

rika_rika

2010年08月30日 11:26

先日、機会があって、日本理化学工業におじゃましてきました。

エンパワメントが実践されている会社を生まれてはじめて目にしました

希望です。信じてきてよかった。これからも人を信じていけると思えました。

日本理化学工業は、
村上龍が司会する「カンブリア宮殿」(2008年11月3日放送)で紹介され、
また、ベストセラーとなった『日本でいちばん大切にしたい会社』(2008年3月出版)に登場する会社ですので、ご存じの方も多いのではないかと思います。

障害者雇用率7割以上。
現在従業員75名中、知的障害者が56名の会社で、
チョークで国内シェアTOPのチョークメーカーです。

当日は、大山会長自ら、障害者を雇用して50年の歴史の説明、工場見学、
そして大山会長ご自身が障害者から学んだことについてお話いただきました。


※写真は日本理化学工業のHPより

★歴史
「当時の私には、知的障害者に対する理解もなければ、
障害者雇用に対する理念もありませんでした。
実のところ、ちょっとした同情心と”なりゆき”で始まったものだったのです。」

1959年。はじまりは、某養護学校の先生からのお願いでした。
大山さんは2度断ります。
3度目に先生が「就職とは申しません。あの子たちはこの先施設に入ります。
そうなれば一生、働くということを知らずに、この世を終わってしまいます。
せめて働く体験だけでもさせてください」

大山さんは、同情心から2週間程度、2名の就業体験を受け入れました。

2週間の就業体験が終わる時、一人の社員が言いました。
「こんなに一生懸命やっているのだから、一人や二人いいじゃないですか。
私たちが面倒みますから、あの子たちを雇ってください。
これは現場みんなの意見です。」

長年みていた養護学校の先生ならともかく、
2週間みていただけの社員全員が社長にこう言ってのける。
知的障害者の2名は、どうして、こうも人を動かしたのか??
ここに
「働く」=「人が動く」、「人を動かす」、「人のために動く」
と書きますが、知的障害者の働くが、従業員たちを動かしたわけです。

2名を採用した大山さんですが、
それで障害者雇用に対する理解や理念があったわけではなかったそうです。
むしろ、ちゃんと守ってくれる施設があるのに、工場で1日中働かせることに、
どこか後ろめたさのようなものを感じていたそうです。

そんな時に禅寺のご住職さんと席を同席するという偶然、いや必然がありました。

「どうして彼女たちは施設より工場に来たがるのでしょう?」
そこで住職さんがお話になられたのが、聞いたことがある人も多いでしょう。
有名な言葉です。

人の究極の幸せは4つです。
1.人に愛されること
2.人に褒められること
3.人の役に立つこと
4.人から必要とされること。

障害者の人達が企業で働きたいと願うのは、
社会で必要とされて、本当の幸せを求める人間の証なのです。」

職場で当たり前のようにかけあう「ありがとう」「助かったよ」
そうしたやり取りによって、人の役に立っている、必要とされていることを実感できる。
施設で「ありがとう」ということはあっても、「ありがとう」と言われることはないのかもしれない。
施設だけでは、人に褒められ、人の役に立ち、人に必要とされることを実感することはできない。
だから、工場にやってくるのだ。

そして、大山さんは決心します。
健常者にとって当たり前すぎて気付くこのない幸せ
それを手放したくなくて、必死にがんばる二人の「働く幸せ」を守る

徹底的に知的障害者雇用にこだわる。
知的障害者が働く会社が、1つぐらい日本にあってもいい。
日本で世界のモデルとなるような知的障害者の工場をつくってやろう!
それも純然たる民間企業として成立させてやるんだ。

大山会長の大きな「夢」となりました。

★語録
大山会長のお話の中で私が心打たれた言葉を掲載します。
◎今ある理解力で適応させる

日本理化学工業では、
障害のせいで出来ないというのは、健常者社員の責任が足りないと考えます。
今ある理解力でどうするか?できるように考えるのが周りの責任だそうです。
リーダーが考えて思いつかなければ、リーダーが集まって考えます。
それでも降参なら、部長クラスが加わって考えます。
そうやって、知恵が集まるのです。

実際に、工夫は多岐にわたります。
袋の文字を読まなくて済むように、色分けしたカンに袋をいれ、
赤から出した粉は、赤の重りと天秤をつかって並行にすれば、
誰でも間違えることなく、必要な材料の量が測れるのです。

時計で時間が読めなければ、砂時計を使います。
チョークの品質チェックでは、専用の容器をつくりました。
はめて、途中でとまってしまうようだと、本来の厚みより大きいのです。
これらは皆、社員さんたちが考えたものです。

日本理化学工業では、健常社員に対し、知的障害者の知識に関する教育は行っていません。
健常者の職員が、一生懸命に考える。
障害者側には、自分の為にここまでやってくれたという思いが伝わる
健常者職員には達成感が生まれる。

「仕事を通してのコミュニケーションがあるから」
大山会長は言います。

◎あきらめずにチャレンジすればできる。
社員に言うだけの会社は沢山あると思います。
日本化学工業のすごいところは、会社がそれを後押ししていることです。

周りに迷惑をかける行為をしてしまった時、
その場で仕事を止めて、家に帰らせるのがルールとなっています。
家族には、本人が反省し、仕事をやりたいと言ったら、出社させてくださいと伝えてあります。
一人より、みんなと仕事する喜びが忘れられなくて戻ってくるそうです。
社員には、何かしらの変化があればチャレンジさせるように伝えてあります。
何回やってもいい、何かしらの変化があれば、何回も何回もチャレンジの場を与えているのです。

日本理化学工業では、
1)一人一人、1年の目標をたて、写真付きで廊下に貼ります
2)グループ分けを行い、グループ毎に、
報連相(報告、連絡、相談)、
PDCA(plan-do-check-act)、
5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾) を実践しており、
月1で発表会とMVPを決めています。

細かいことはわらからなくても、
相談することや、品質への意識の高まりが生まれるそうです。
実際、不良品率が1%も下がりました。

あきらめずにチャレンジすればできる!
社員への押しつけでもなく、単なるストーガンでもなく、
会社が人を信じているからこそ、場をつくり、実現しているのです。

◎天の神様は、どんな人にも世の中の為になる才能を与えている
この言葉は、見学に来た小学校5年生のお礼文の中にあった言葉だそうです。
この言葉だけを見れば、すごい小学生だなと思う人もいるかもしれません。
しかし、一度、工場を見学されれば、誰もがそう思うであろうことに気がつくでしょう。

あの集中力。休むことなく、モクモクとすごいスピードで仕事をこなします。
嫌な顔せず、むしろ笑顔まで見せて。
自分が出来ることがあるということ、自分の出来る限りのことをやっている時、
人はあんなにも穏やかな表情を見せるのかと思います。
彼ら彼女は正にあの場に必要な人達であり、
どんな人にでもどこかで役に立つ力がある。
そう、小学生が勇気づけられたのは自然なことでしょう。
その小学生は、自分が大きくなった時に役に立てるよう、
今がんばりたいことについても記載があったようです。

◎人に投げた幸せがブーメランみたに戻ってくる
これは、カンブリア宮殿で村上龍が、大山会長に言った言葉です。

チョークは、情報化で、いずれ使われなくなる時代が来るかもしれない。
そんな中、様々な応援により、開発されたのが「キットパスチョーク」です。


※キットパスのお買い求めはこちら

なんと、ガラスに描いても消せるチョークです。
家の窓ガラスに自由にお絵かきできますよ!
とてもやわらかい下記心地で、描いているだけで気持ちいいです。
水を混ぜれば、まるで水彩画のようなタッチも可能!

これまで学校での需要が多かったチョークですが、家庭へと用途が広がっていきました。
それを受けて、村上龍さんが言ったのが、幸せのブーメランの話です。

これまでの50年を振り返り、
2.人に褒められること
3.人の役に立つこと
4.人から必要とされること
をやれば、
1.人に愛される
ようになると、ご住職に言われたのかもしれない。
大山会長は思っているそうです。

日本理化学工業の話は、沢山の本が出ています。
ぜひ読んでみてください。
また、機会があれば、ぜひ足を運んでほしい。

話しを聞いて、「チョーク会社だから出来たのだ」と言った人もいたそうです。
私はそんな人に問いたい。想像力を働かせてほしい。
・そのチョーク会社でどれだけの人が、時間と知恵を使って、今を築き上げたのか
・人が会社がそこまでしてきたのはどうしてなのか?働く喜びをつくるってどういうことなのか?
・チョーク会社だからと、自分の誇りある仕事を見下された人の気持ちを
・自分は、そんなにも懸命に何かを成し遂げようとしたことがあるのか
・自分だけでなく、他人をも諦めている自分を

下げるのではなく、支える。
75点だと非難するのではなく、みんなで支えて120点にする。
そうすれば、みんな120点がとれるじゃないか。

エンパワメントとはそういうこと。
日本理化学工業はエンパワメントを実現している会社です。

志をもち、自分ができることを一生懸命やる。
大山会長から学びました。






関連記事